自己愛性人格障害者が起こす記憶障害の特徴

自己愛性人格障害者が、

自分の言ったことや行ったこと、人から聞いたはずのことを

「覚えていない」

ということがあります。

覚えていないというよりも

そんな事実が最初からなかったかのように

振舞うこともしばしば。

自分の都合の悪いことだけを、

すっぽり記憶からなくしてしまっているような気さえ

してしまいます。

これは、「否認」という防衛機制が

原因でこういう事態になります。

自己愛性人格障害者に対して

「この人は頭がおかしい」と感じる場面は

たくさんあるとは思います。

配偶者や恋人、友人である

被害者となる人をひたすら攻撃するときは

何時間でも責め立てることが出来ますが、

その何時間でも責め立てている、

こと自体を忘れていたり、

どれだけひどい言葉を言ったかも

覚えていなかったりします。

自分にとって都合の悪いようなことは

そもそも知らなかったようなそぶりを見せたり、

まったく覚えていなかったり。

 

  • なんで覚えていないの?

本当に忘れているの?

けど本当に知らないような・・・

きっと嘘だ、自分の都合が悪いから

忘れたことにしているんだ、と思っても

あまりに回数が多いので、

被害者は

「本当に覚えていないのか?」

「記憶が抜け落ちている?記憶障害?」

「頭がおかしいのでは?」

なんて考え始めます。

加害者が嘘をついているのではなく、

本当に覚えていないような気がしてくるのです。

では自己愛性人格障害者は、

本当に記憶をなくしているのでしょうか。

答えは否、です。

 

  • 否認、という防衛機制

自己愛性人格障害者は

記憶自体はしっかりしています。

ではどこの問題で「忘れた」ようになって

しまうのかというと、

心の問題です。

自己愛性人格障害者にとって、

受け入れがたい現実というものは

とても多いです。

それを受け入れてしまったら、

自分が「恥ずかしい人間なのではないか」

心理的に負担がかかるのではないか、

というようなことが

自己愛性人格障害者にはよくあります。

ですから、そのような事実があった場合、

まるでそれがなかったかのように

心が錯覚してしまうのです。

これが「否認」です。

それらは無意識下でなされるので、

意識上には上ってきません。

なので、自己愛性人格障害者は記憶してはいるのですが、

心でそれを認識できず、結果

「そんなことは覚えていない」

ということになるわけです。

 

 

  • 「否認」は、自己愛性人格障害者でない人にも現れる

「否認」の具体例を紹介します。

たとえば、母と娘が二人で会話していたときのこと。

母「ねえ、今度マサヒロのところに

遊びにいきましょうよ、

マサヒロの家の近所にいいお店があるから

三人で一緒に行きたいの」

娘「え?お母さんなに言ってるの、

お兄ちゃんは癌で、入院中じゃない。

この前先生からも説明受けたでしょ」

母「え?そうなの?

体調悪いだけじゃないんだっけ?」

そして数日後。

母「隣のおうちの息子さんが

癌で亡くなったんだって。

マサヒロも不摂生がたたって

癌になったりしないように

メールで注意しとかないとね」

娘「・・・・(お母さん、この前も

説明したのに、なんでお兄ちゃんが癌になったことを

何度も忘れるのかしら)」

この場合、

この母親は記憶自体は問題なく、

他の事は覚えているのですが、

「自分の息子が癌になった」

ということのショックが強く、

そのことを心が否認して、

まるで癌になった事実など無いかのように

認識することで、心を守っています。

このように、

ショックが強すぎれば自己愛性人格障害でなくても

否認という防衛機制がとられることは

ありえることなのです。

ところが自己愛性人格障害者は

普通の人よりも格段にストレス耐性が低いので、

この否認という防衛機制が働きやすくなっています。

なので、被害者からすると普通に

「なんでこんな忘れるはずもないことを

忘れるの?」

「なんで自分にとって都合の悪いことばかり

忘れるの?」となります。

自己愛性人格障害者にとっては、

それを認識してしまうと「嫌な自分」

「自分がストレスを受ける事実」というものを

認識しなくてはならないため、

出来るだけそれを避けようとするのです。

ですから自分が被害者に対して

どんなひどいことを言った、などは

まったく覚えていなかったりします。

 

  • 記憶障害とどう違うのか?

記憶障害というのは、

そもそも記憶する機能自体に障害があると

いうことなので、

その事柄が個人にストレスを与えるような内容で

あってもそうでなくても、記憶できません。

ですが心の防衛機制による否認というのは、

心にストレスをかけるような事実を

とにかく避けるために起こります。

ですので、その事柄が心にストレスを

かけないような事実に変われば、

自己愛性人格障害者はその事実を「記憶」は

していますから、

とたんにその記憶を引き出すことができるように

なります。

 

たとえば、

自分がストレスのかかるような場所に

いかないといけないとき。

そして、忘れたということにすれば

いかなくても済むようなとき

(※たとえば配偶者だけが行けば

いいようなとき)。

その場所に「行かないといけない」という事実を

消すことがあります。

なので、ずいぶん前から何度も聞いていた予定や、

自分で何度も確認していた予定を

「まるで、そんな予定はなかった」

「聞いたことなどない」かのように、

振舞うのです。

ところが、

「ストレスのかかる場所」が、

「ストレスのかからない場所」に変わり

(ストレスの元になる人が

来ないことになった等)、

さらに

「行けば自分にとって

非常に得になる」ようなことが

起こると分かった場合、

自己愛性人格障害者は

記憶を失ったような振る舞いを

することはありません。

 

否認というのは、

ストレスのかかる事柄から目をそらすためには

手っ取り早い心理的防衛の手段なのです。