自己愛性人格障害は甘えなのか

自己愛性人格障害者を見ていると、

まるで幼児のような振る舞いに

みえることがあります。

 

幼児が思い通りにならなかったときに

泣き叫ぶように、

母が自分のためだけに動かないからと

暴れて困らせてやろうと行動を

するように、

まるで自分の願望が叶わないから、

その鬱憤を晴らすように

癇癪を起こす。

 

そんな自己愛性人格障害者の

姿を見て、「子供の甘え」と同じだと

感じる被害者もいるでしょう。

子供のころだったら

ただの甘えで済むのに、

大人で力もあって弁も立つから、

厄介なだけなのだと。

そう思う人もいるかもしれません。

果たして、

自己愛性人格障害者は「甘えて」いる

だけなのでしょうか。

答えは「否」です。

 

自己愛性人格障害というのは、

甘えではありません。

「投影」という未熟な防衛機制に囚われた、

立派な精神障害です。

自己愛性人格障害が甘えというなら、

その甘えはいつまででも続きます。

幼児の甘えは幼児の時期にしか

出現しませんが、

自己愛性人格障害者の癇癪は

一時的ではなく、一生続きます。

そしてその甘えた結果も

満足感を得られることはないので、

いつまででもその甘えから

抜け出すことはできません。

ですから、甘えというものとは

少し違います。

 

自己愛性人格障害者はたまに、

「甘えているだけだよ」と

自ら言うことがあります。

つまり自分の癇癪や自分の急な

不機嫌は、

あなたに甘えているだけだから

そんなに深刻な話ではない、

という表現をすることがあるのです。

しかし、実際はそんな簡単な話ではないのです。

なぜ暴言や八つ当たりが「甘え」といわれて

「そうなのかも」と妙に納得する人が

いるのかというと、

甘えというのは自分ではどうにもできないことを

相手に期待する、相手にどうにかしてもらおうと

する幼児じみた典型的な行動だからです。

「自分には思い通りにする能力はないけど

思い通りにならないのは

とてつもなく苛苛するから、

それをあなたがどうにかするべき」という

操作性、コントロール性の高い欲求が

この「甘え」ですね。

 

ただの攻撃や八つ当たりならなんだよ八つ当たりすんな、と

相手を不愉快にさせますが、

甘えだといわれると妙に不愉快さが

消えてしまうものです。

 

ですが、

相手を操作するためだけの

都合のいい言葉であるという

側面がこの「甘え」にはあります。

とにかく、

自己愛性人格障害というのはそうした甘えではなく

立派な精神障害のひとつだと

覚えておいたほうがいいでしょう。

 

でないと、

たくさん甘えさせてあげたら

いつかは理解してくれる、

目を覚ましてくれる、

信頼されているからあれだけ素の自分を

出してくれているだけだ、

なんて淡い期待を抱き続けて

傷を負うだけの人が

増えてしまうからです。