自己肯定感とは

自己肯定感とは

自己肯定感とは「自己効力感」のことでもあります。

誰かと比較することによって起こる自分の相対的な評価ではなく、

自分ひとりに対する自分の考えや感情、自分に対する価値観です。

 

自分は長所も短所もあるが、それこそが(他の何者にも代えがたい)

自分であって価値がある。

という感覚ですね。

 

長所だけの自分じゃなくても自分を受け入れられる、

自分の良いところも認められる、

悪いところもありながらもそれはただの自分の一部であって

それが個人を脅かすことはない。

そういう自信であり、感覚です。

自分が自分であってもいい、こういう自分自身であるから生きてゆける、

という心の基盤でもあります。

 

自己愛との関係

自己愛を満たそうとする段階になると、

いろいろな試行錯誤を経て親の愛情を試そうとしたり

反応を見ようとします。

自分だけを愛してほしい、ほかのものにとられないでほしい、

相手の都合はどうでもよいから自分だけを見てほしい。

自分はなんでもできるような気分でいるのが小さな子供です。

 

簡単に嘘をつき、自分を守ろうとします。

とにかくわがままを言って、要求を通そうとします。

自己肯定感を作るためのステップともいえます。

こどもというのはそういう経験を積み重ねながら、

「自己肯定感」を高めてゆき、そのうちその自己肯定感が基盤と

なってその個人の個性の土台となります。

そしてそういう基礎があるからこそ、自分を必要以上に守ったり

自分を大きく見せたり、大きい存在なのだと思い込む必要も

なくなり、自分への愛の要求でなく他人を愛することができるようになります。

これが自己愛→他者愛への発展です。

 

たとえば自己愛性人格障害、というのは

これら自己肯定感が全く育たず、価値がありミスをしない自分しか

価値がない、と判断しているために

自分を尊大に見せたり愛(相手が思い通りになること)を

要求し続けるしかない・自己愛に拘り続けるしかない障害といえますが、

 

自己愛性人格障害とまでいかなくても、

自己肯定感の低い人や自己効力感が育っていない人というのは

少なからずこの世の中に存在していて、

そういう人こそターゲットになりやすかったり、

愛情に飢えるあまりに愛を獲得するためならなんでもする、

といったような行動をとりがちになります。

つまり他者を愛しているから付き合ったり交際しているわけではなく、

他者に愛されるために、もしくはたまたま好きになってもらったから

その好意を手放すことが非常にもったいなく感じて、

付き合ったり交際したり、あるいはもっと愛を獲得するためだけに

相手に尽くそうとしたり・・・

という傾向にあります。

 

その個人に興味があるわけではないので、

自分を好きでいてくれる(可能性がある)相手だからこそ価値がある、

という風に考えがちです。

 

 

 

 

自己肯定感が低いとどうなるか

自己肯定感が低いと、そのままだと人は生きづらくなります。

ですから、なんとか生きやすくする「心の精神安定剤」を

用いて即席的に自己肯定感を上げる(上げた気分になる)

ことで生きやすくしようとします。

 

自己愛性人格障害者のモラハラというものはその最たる

ものになります。

そのままだとあまりにも生きづらいので、

もともとある人格はなりを潜め、「すばらしく有能で

価値のある、思いやりにあふれる自分」という思い込みにて

自分を守ろうとするのです。

 

ここまでいかなくても、

自己肯定感が低いと優越感というものも同時に高くなります。

 

優越感とは、本来自信のある人・自己肯定感が高いという風に

感じますが、

これも自信のない人が自分の心の安定化を図るために

一時的にひっさげた「(即席の)自己肯定感」ということになります。

 

つまり自己肯定感・自己効力感が高い人というのは

優越感など持たなくてもそのまま生きていけるのです。

ですから優越感が高ければ高いほど、優越感を高くしないと

心のバランスが保てないほど自己肯定感が低いのだ、

ということの証明にもなります。

 

また、自己肯定感が低いと「人を相対的にみる」傾向にあります。

自分と誰かを比較し、誰かと誰かを比較しやすくなるということです。

自己肯定感があると相対的に見なくても「自分は自分であり、

誰かより上でも下でもない」と思えるのですが、

自己肯定感が低いと「自分個人には価値がない」と考えるしか

ありません。

しかしそのままだと自分というものが危機にさらされますから、

人の心理として自然と「誰かと比べたら、自分のほうがマシだ」

と考えるようになるのです。

 

ですから他人が堕ちれば堕ちるほど、(相対的に見れば)

自分は価値のある人間だと思い込めるということになります。

自己愛性人格障害者はよく他人に対する非難をこれでもかというほど

行いますが、それは低すぎる自分の肯定感を補うために

必要な行為ともいえるのです。

 

 

 

相手が思い通りにならないと気が済まない

そして自己肯定感が低い人というのは、

自分に自信がなさそうでいて、かつ優越感というものを

得ないと気が済まないので、

「自信はないのにプライドは高い」という奇妙な状態を

とることがあります。

 

「自分なんか愛されないはずだ」と言いながら、

「あの人はメールがいつも少ない。愛しているなら

行動で伝えて、あれだけ連絡が欲しいからと

伝えたのに。信じられない」という想いを抱える人もいます。

その言動の裏には、「愛されるはずがないと思っているけど、

私は愛されるべきだ(相手は行動で示すべきで、私がこう

言っているのだから思い通りに動くべきだ)」という想いが

隠されています。

 

それは矛盾した主張のようにも感じますが、

愛されないはずだ、というほどの自己肯定感の低さが

あるからこその「愛されるべきである」「あの人は私を

愛するべきである」という強迫観念にも似た想いなのです。

自分が愛されていると思えるうちは

自分の自己肯定感の低さから目をそらせるので

それゆえに愛されたいと思うのですが、

愛してくれていないのでは?と考えると不安になり、

自己肯定感を持つことも難しいのでまた別の

「愛してくれる人」を探し続けることになります。

 

そのために恋愛するといっても過言ではないでしょう。

 

 

自己愛性人格障害者になると、愛されないという可能性

すら考えることが苦痛になりますから、

ターゲットは自分を愛するべき、思い通りになるべきという

感情がより一層強くなり、ストーキングなどの行為に

走ることも珍しくありません。

境界性人格障害者に関しても同じことがいえます。 

 

 

自己肯定感が高い人とは

自己肯定感が高いと、自分は自分であるという

確固たる自信が自分の中にありますから

まず他人の目を気にせずに自分らしく行動できます。

自分で悩み、考え、必要があれば他者に助けを求め、

最終的には自分で判断することができます。

わざわざ他者評価を高めるためだけの言動を考えることもありません。

そして何より、生きやすくなります。

当然ですが、自己肯定感が高いからといって

「自分は自分である」という独立的な価値観だけが育つわけではなく、

ちゃんと相対的にも自分を見ることができます。

社会とはどうつながっていて、自分は社会や集団の中で

どういう立ち位置にいる、ということも理解できるのです。

その中での、相対的に見た自分の価値、というのも

正しく評価することができます。

 

そして、他者から愛されないときはそれはそれで

諦めます。

愛されないからといって自分が相手の思い通りになってまで、

人に愛されることに価値を見出せないからです。

それよりもまず自分が自分を愛することができるかのほうが

重要なのですから。

そして他者にとっても、他者が思うような人生を歩むことのほうが

優先だと考えます。

自分の人生のために、誰かを思い通りにしようなどとはまず考えないのです。

失敗を恐れて、何も始めないということもしません。

失敗したら失敗したで、それを糧にできるからです。

失敗はただの失敗であり、それ自体がその人の価値を脅かすものには

なりません。失敗したときの経験もないと、そのあとうまくいかないことを

理解しているからです。

それを、自己肯定感が高い人というのは

感覚でつかんでいるのです。

ですから自分がやりたいと思ったことには

何事にも挑戦することができるでしょう。

 

 

 

自己肯定感を高める方法

自己肯定感とは、「自分って素晴らしい人間なんだ!」と

頭で思うことではありません。

自己肯定感というのは自己効力感、自己イメージ、などといった

言葉にも置き換えられます。専門家によってどの言葉を

どのような意味で用いているかというのは若干の差異があるのですが、

 

まずは臨床心理士のカウンセリングなどでカウンセラーを

「自分の鏡」として利用し、自分の自分に対するイメージはゆがんでいないか?

歪んでいるとしたらどのくらい歪んでいるのか?

そしてその歪みはおかしいものなのか?そうでもないのか?

なぜ歪みが生じるのか?どのようなタイミングでどんな歪みが

生じるのか?それは自分の人生や考え方にどう影響しているのか?

ということを理解する、気づきを得るということが何より重要になります。

 

もちろん、カウンセリングにいつでもいける環境にある

という人も少ないかもしれないので、

まずはとっかかりに自己肯定感に関わる

本を読むなどしてもいいでしょう。

 

自分は価値がない、なぜならこういうときにこういうことをしたり

こういうことを考える酷い人間だから、と思っていても

さしてひどいことでもなかったり、それは自分の心を守るために

致し方ない行為であったりします。

認知と心のレベル、第三者から見た評価や世間の評価というものは

必ず相違があるものです。

 

小さな成功体験を積み重ねる、といっても

自己肯定感が低い人というのは成功体験も低く見積もりがちなので、

自分の失敗は大きくとらえ、成功は小さくとらえるか

優越感に浸るための道具としてしか使えない人も多いのです。

 

ですからまずは認知レベルで物事の見方を改善していくということが

必要になってくるでしょう。

 

感動体験の自己肯定感に関する効果

感動体験とは主に幼少期にこどもが経験することによって

自己肯定感を生むものですが、

大人は感動することが少なくはなりますが、

これによっても自己肯定感というのは育むことができます。

 

何も、他者との関わりの中だけで

自己肯定感が積み重なっていくわけではないからです。

他人から認められた、褒められた、何かできないことが

できるようになった。という事象ばかりが必要なわけではありません。

 

何か感動的な景色を見た。お芝居を見た。

非日常の経験をした。自然体験をした。そういうことでも

自分が応援しているチームが決勝までいった。

それだけでも、自己肯定感というのは少しずつ積み重なっていきます。